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2019.05.03

この時期、目の前の電線上では鳥たちの求愛ダンスがしばしば見受けられる。今日は日中、二羽のヒヨドリが電線上でイチャつき始めた。

最初に現れたのはメス。そこにとひと回り大きいオスがすぐにやってきた。
二羽の間隔はヒヨドリ三羽分。オスは逸る気持ちを抑えた上々の距離感を取った。
だが、所詮オスはオス。「その気ありまっしぇーん」な顔をしてもそんなこたーあった試しはない。すぐさま一歩近寄る。すると、お決まりのようにメスは半歩遠ざかった。この間合いは全生物に共通なのかあ?

やがてオスは見た目にもそれとわかるほど「その気」になった。今すぐこの場で押し倒してやる!ってな気配濃厚だ。だが、それを悟られるわけにもいかない。一歩、また一歩と、飛び跳ねんばかりにメスに近寄る。焦るな!オス‼
ところが相手のメスがなかなか小憎らしい。半歩遠ざかる都度、これ見よがしに尻尾を振る。古来、長恨歌の時代から鳥が尻尾を振るのはあのサインと決まっているから、オスはますますその気になる。

やらせろ! いや~だ、フフ
やらせろ‼ フフフ
やらせろって‼‼ フフフフフ……

一歩近寄る。半歩逃げる。また一歩近寄る、尻尾を振って半歩逃げる…… いつまでやっとんじゃ! 

そしてついに三羽分の間隔は半羽分にまで縮まった。さあオスよ! 最後の一歩を力強く踏み出しやがれ‼

と思ったところでメスは飛び去った。必死の形相で追いかけるオス…… 二羽の姿は視界から消えた。

その後二分。電線に止まったのは一羽のヒヨドリ。多分…… オスだ。
哀れそのオスは、最後の見栄でスッキリと首をもたげたが、その所作がいかにも侘しい。やがて所在無げに山の方へ飛び去った。
あ~ぁ……

そういうこと、あるよ…… ある夜のことを回想しながら、人間のオスが呟いたとさ。