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2018/12/12

カラスが群れていた。

めっきり見かけることのなくなったカラスが、そこらじゅうを飛び回っている。時折、西向きの窓辺に威嚇するかのように向かってくる姿は、それなりに不気味だ。

数えると二十羽近い集団だ。隣家のテレビアンテナの上、畑の向こうの、誰のものか所有が知れない柿の木に止まったりして、ガァ〜ガァ〜騒がしい。
野犬でもくたばっているのかと思ったが、それらしい気配もない。

遠くの高圧線のあたりには別の集団があって、そっちはここよりさらに規模が大きく、高い場所を旋回しつつ周囲を睥睨している。ホント、今日はカラスの親分さんの襲名披露でもあったのかね?

ここのところ、このあたりはのどかだった。
春先にはメジロが花蜜を吸いにやってくる。ウグイスは良く通る声を張り上げる。
シジュウカラは目の前の電柱に巣を作り、スズメは横取りを目論む。
ジョウビタキは黒い瓦の上でオレンジ色の胸羽を休めている。オジロは平たい車庫の上でツガイが跳ねるようにダンスに夢中。
時にはカワセミまでやってきて、秋にはモズが電線の上で獲物を狙う。
キジが庭をうろついて、ヒヨドリがガラス窓に飛び込んだ。さすがにそれにはちょっと驚いた。

つまり、ここはそうした無邪気な小鳥の集う場所のはずだった。昔はこのあたりにもいたはずのカラスやトンビの姿は消え、嫌われ者たちはいなくなったとばかり思っていたが……

だけど、この日はカラスが頭上を旋回し、ここは俺たちのものだぞと主張している。お前たちの自由にはさせない、そう脅している。小鳥たちの姿はどこにもない。

さあ、明日の空は何が制空権を抑えるんだろうね。
多勢に無勢。カラスが制空権を制してモズはいなくなった……
秋になると姿を見せるモズ。小鳥の楽園の頂点に立つこの鳥も、この日のカラスには太刀打ちできない。
子供の頃見かけた、野良犬の死骸に群がったカラスを思い出した。
カラスにすれば単に生きるための自然な営みだが、おそらく大抵の人間からは忌み嫌われる。
人間のすること、感じることは大抵が理不尽なものだ。