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2019/02/06

「もし、それが真実ならボクは……」の第7話を読み返しながら、書いているときのことをふと思い出した。
第7話は主人公と家族との思い出のシーンを挿入しているうちに物語の結末を思いつき、それまで漫然と綴っていたストーリーに方向性が見えた回なので、その時の記憶が比較的しっかり残っている。ここで伏線を張ったなあなんてことを懐かしく思い出した。
この作品を書き始めたきっかけは単純な理由だった。前作の「七夕の夜に」がかなりテキトーなリハビリ作品だったので、もうちょっときちんと書かなきゃな、と思っただけなのだ。
だけど、題材になることを思いつかない。最初のうちは、こんな子が急に目の前に現れたらいいな、なんてことを単純に綴るだけだった。だから最初の6話はなんの脈絡もない。
ただ、描いているうちに、誰かを好きになる、ってことは、こんな偶然が積み重なった結果で、これこれこういう理由だからこの人が好きになりました、なんて明確なものはないんじゃないか?と思い始めた。
ふと相手が気になって、何かを感じて、それに対して相手が反応を示してくれて、それにまたさらに惹き寄せられて、ってことが何度も繰り返されるうち、徐々に徐々に互いが欠くべからざる存在になるんじゃないか。あの頃、ボクはそんな気持ちでいたような気がする。
第7話で主人公のボクは彼女に絡めとられた自分の気持ちに本当の意味で気づき始める。前半までのただ不思議な存在、いいなあと思うだけの存在が、自分に強い影響を与える存在になっていることに気づく。失えないと思ってしまう。そういう状況。そして、彼女だけが主人公の心の奥の扉を開けようとする。

過去の記憶に基づかないという意味で完全なフィクションに近いのだが、心のどこかで誰かのことを思って書いた作品だから、ホントはフィクションでもない。どのエピソードにも登場しないけど。

この作品を書いている時によく聴いていたKat Edmonson。彼女のふわっとした歌声が、あの頃の自分には必要だった気がする。
夕方、ふと西向きの窓を寝転がって見上げると、綺麗な夕暮れ時の空が広がっていた。