
遠くにこの道祖神を見つけたとき、今にも崩れ落ちそうな白髪の老女と、それを支える無言の男に見えてしまった。
一度は通り過ぎたが、なんとなくやり過ごせず、引き返して写真に収めた。

近づくと、老女の骨と皮だけの腕が、必死で男にしがみついている。首はやや外側に折れ曲がり、最期の時が近いことを思わせる。

背中側から見ると、痩せた肩幅は束ねた白髪よりさらに細く小さく萎んでいる。背骨の浮き出た身体が痛々しい。男はあくまで無表情に、老婆が抱きつくに任せてはいるが、手を添えるでもなく無慈悲だ…
これは近所の道祖神。恐らくは猿田彦でも祀った石塔に締め縄が巻き付けられたもので、いつもは別角度から見慣れたものだが、今日初めてそんなふうに見えた。
なんだか、妙に哀しくなった。
晴れた昼下がりのこと。