2019.06.01

この時期、運動会のご予定がある方も、とニュースで語っているが、おいおい、運動会は秋だろ？　ってツッコミを入れるのはボクが田舎者だから？　それとも昭和世代がバレバレ？　どっちにしても昔と今じゃ運動会は様変わりなんだってね。

ボクが小学生の頃、つまり、前髪をキッチリ切り揃えたオカッパちゃんの頃、運動会は世間の一大イベントで、近所の八幡宮より数多い出店が並んだものだ。
祖母と母親は朝からお弁当づくりに精を出し、祖父と父は朝一番で場所取りに出かける。叔母たちは食卓でボクのかけっこは何等だろう、って予想する。とにかく、曾祖母以下家族全員が当然のように集ったものだ。
家族席は予め地区割されていて、それが毎年移動するから、今年は正面だとか、かけっこのゴールあたりだとかで盛り上がり、そこには近所のおばさんおじさんもみんな来ていて、中には子供が学校に通っていない人の姿もある。そしてその誰もが、みっちゃん、やら、たくぼう、など、どの子の顔も名前も知っているから、どの学年の競技でも大声で誰彼構わず応援している。
競技はみんなガチで遠慮はしない。騎馬戦も棒倒しも普通にやった。ただ、派手な組体操は小学生ではやらない。
午前中のハイライトは5,6年生の鼓笛隊だけど、ボクの通った小学校では県内有数の管弦楽団があったから、そりゃもうド派手なんてもんじゃない。実はボクも入団テストを受けたけど、バチ叩きで落とされた。それが今でもイチバン悔しい思い出だ。
お昼休みのお弁当は当然家族一緒。そこに近所の変わり者のおっさんがやって来て、そのおかずをくれや、とチョッカイを出してくる。ボクが大好きなぶどう以外ならどれでもいいよと差し出すと、クソオヤジはぶどうだけ取って食べ始める。それを家族はニコニコしながら見ている。
お昼休みの後半はお小遣いを貰って出店に並んだおもちゃの鉄砲を買う。あっちでもこっちでも火薬玉をバンバン鳴らすから、あたりは火薬独特のニオイが漂う。
午後になるとリレーがメイン。ボクはかけっこは一番でも選ばれた選手だけのリレーとなると常にホケツだから出番なし。6年生男子が最後の一周を回る時の応援はその日一番の大声援で、足の速い子たちはもはやヒーローだ。
そうそう、親たちが参加する綱引きでは、みんながあまりにガチになりすぎて縄がブチッと千切れたことがあった。アナウンスで前代未聞と言っていたが、その時の様子をいつもは冷静な父さんが興奮気味に話して妙な感じだった。
そして三時過ぎにはすべての種目が終わる。家族席の誰一人として途中で席を立つものはおらず、最後の体操を見守りるとようやくシートを丸め始め帰りの準備にとりかかる。あっちでもこっちでもおばさんたちの賑やかな話し声が続く。
ボクたちは買ったばかりの鉄砲をずっと鳴らしっぱなしで家に着く頃には火薬玉は底をついている。
そして、その日はずっと浮かれっぱなしのまま一日が終わるのだが、大人たちは翌朝、何事も無かったかのように仕事に戻る。ボクたちは代休を鉄砲遊びで過ごすのだが、その頃には火薬玉がないのでいつの間にかどこかに失くしてしまう。

こんな感じの運動会が行われていたんだけど、今はどんな運動会なんだろう？　ビデオ撮影にやたら熱中して我が子だけを追いかけるのかな？　ボクも当然そんな父親で自分の子供以外はほとんど見覚えがなかった。お弁当も子供たちは教室で食べていたし。時々、校庭でお弁当を囲む家族を見かけると、ふ〜ん、変わった家族、と思ってたかも……

小学校の大運動会。既に失われて久しい古き良き時代の光景。